2025年1月31日金曜日

最終兵器の目  新しい古代の神話 尾張氏の神話1 韴霊剣

  尾張氏の始祖について、『日本書紀』では彦火火出見の弟である火明を「是尾張連等始祖也」としている。『舊事本紀』は天香語山(高倉下)、『古事記』では火明が迩迩藝の兄で、奧津余曾を尾張氏の始祖としている。『古事記』の火明を『舊事本紀』は饒速日と同一視し、『日本書紀』の火明と別人で、各史書まちまちだ。

しかし、それ以前の説話として、伊邪那岐が迦具土を切った十拳劒を天之尾羽張、別名を伊都之尾羽張と呼び、その劒で迦具土を切った際に血から建御雷之男、別名建布都が生まれた。これは高倉下が得た韴霊剣と同名である。後の段では、建甕槌之男が天之尾羽張の子とされ、大国主に国譲りを迫る。

すなわち、これらの説話は高倉下が祀る神の神話と考えられる。迦具土、迦は恐らく河神である「カ」を意味し、対馬出身の河神の「香久」と、対馬の黄泉の神(月讀)を撃つために香久山に集まった石拆、根拆、石筒之男、甕速日、樋速日、建御雷之男、闇淤加美、闇御津羽の八柱の神々によって勝利を収めたのだろう。火の神とする迦具土は、九州の神である加須屋の大海祇、大山津見の一員と思われ、香久山の神に対応するように八柱の山津見を生んだ。香久山は久須夜岳の住人で、久須夜岳は小浜の内外海半島に住む神の久が祀られる巣の八国の山という意味なのだろう。小浜の隣には高浜町があり、高倉下の出身地と考えられる、高浜の倉主なのだろう。

破れて生まれ故郷の対馬の黄泉の国に返されたと考えられる神は、比婆に葬られた伊邪那美とは別人の黄泉津大神である。黄泉で雷を追い返した意富加牟豆美の名を継承したのは、建御雷之男の末裔であり、出雲鞍山祇姫の子である。したがって、尾張氏は賀茂君や大神君の祖神からの分祀と考えられる。このように、武力の象徴である刀の尾羽張という尾張氏が祀る神を配下にした多賀の葛木氏の祖でもある伊邪那岐も、尾張氏が祀る神と理解できる。奧津余曾・葛木彦は尾張氏の祖でもある。

0 件のコメント:

コメントを投稿