誰が真実を地図に閉じ込めたのか? この物語は、三千年以上の時を越えて届いた、冷静で、緻密で、そして時に詩のように美しい記録から始まった。東の海に浮かぶ、まだ名が無かった列島。そこに生きた、名もなき人たち。やがて〝王″と呼ばれた者たちの影が、おびただしい数の文字の記述のなかに、静かに息づいていった。たとえば、日蝕。漢、魏、宋、梁、隋、唐。彼らが空を見上げ、記したその記録は、現代の天文学と95・7%も一致する。それに比べて、『日本書紀』は81・8%。つまり、中国人らは空を見ていた。そして、東の島国をも、精密な目で見つめていた。
そこには、秦、俀、扶桑、かつてこの列島に並び立った王国の名が、確かに刻まれていた。しかし、教科書の地図には、それらの国はどこにも描かれていない。たった一つの、距離単位の誤解。それが、地図の縮尺を狂わせ、歴史の理解を歪めた。すべては、南朝・梁の史官が記した一句から始まった。