2022年9月7日水曜日

最終兵器の目  『日本書紀』応神天皇類書7

  『古事記』前川茂右衛門寛永版は続けて「故茲神之女名伊豆志袁登賣神坐也故八十神雖欲得是伊豆志袁登賣皆不得婚於是有二神兄号秋山之下氷社()夫弟名春山之霞社()夫故其兄謂其弟吾雖乞伊豆志袁登賣不得婚汝得此嬢子乎荅曰易得也尓其兄曰若汝有得此嬢子者避上下衣服量身高而醸甕酒亦山河之物悉備設爲宇礼豆玖云尓尓其弟如兄言具白其母即其母取布遅葛而一宿之間織縫衣褌及襪沓亦作弓矢令服其衣褌等令取其弓矢遣其嬢子之家者其衣服及弓矢悉成藤花於是其春山之霞社()夫以其弓矢繋嬢子之厠尓伊豆志袁登賣思異其花將來之時立其嬢子之後入其屋即婚故生一子也尓自()其兄曰吾者得伊豆志袁登賣於是其兄慷愾弟之婚以不償其宇禮豆玖之物尓愁白其母之時御祖荅曰我御世之事能許男()神習又宇都志岐青人草習乎不償其物恨其兄子及取其伊豆志河之河嶋一節竹而作八目之荒篭取其河石合塩而裹其竹葉令詛言如此竹葉青如此竹葉萎而青萎又如此塩之盈乾而盈乾又如此石之沈(而沈)臥如此令詛置於烟上是以其兄八年之間干萎病枯故其兄患泣請其御祖者即令返其詛戸於是其身如本以安平也此者神宇礼豆玖之言本者也又此品陀天皇之御子若野毛二俣王娶其母弟百師木伊呂弁亦名弟日賣真若比賣命生子大郎子亦名意富々杼王次忍坂之大中津比賣命次田井之中比賣次田宮之中比賣次藤原之琴節郎女次取止()賣王次沙祢王七王故意富々杼王者三國君波多君息長坂君酒人君山道君筑紫之米多君布勢君等之祖也又根鳥王娶庶妹三腹郎女生子中日子王次伊和嶋王二柱又堅石王之子者久奴王也凢此品陀天皇御年壹佰参拾歳甲午年九月九日崩御陵在川内恵賀之裳伏百舌鳥陵也崗也」、【それで、この神の娘に伊豆志袁登賣神がいて、八十神はこの伊豆志袁登賣を得ようと思ったが、皆、婚姻できなかった。そこに二はしらの神がいた。兄は秋山之下氷壯夫と名付け、弟は春山之霞壯夫と名づけた。それで、その兄が、その弟に「私は伊豆志袁登賣を求めたが、婚姻できなかった。お前は乙女を得られるか。」というと「簡単だ。」と答えた。そこで兄が「もしおまえが、乙女を得ることができたら、上下の衣服を脱ぎ、背丈位の甕に酒を釀し、亦、山河の産物を残らず備える賭けをしよう。」と言った。そこで弟は、兄が言ったように、詳しく母に言うと、母は、藤の蔓を取って、一晩で、衣褌、及び襪沓を織って縫い、亦、弓矢を作って、その衣褌などを着て、弓矢を取らせて、乙女の家に行かせると、その衣服、及び弓矢、残らず藤の花に変わった。そこで春山之霞壯夫は、弓矢を乙女の厠に懸けた。伊豆志袁登賣は、その花を持って来る時に、乙女の後に立って、その屋内に入るとすぐ、犯した。それで、一人の子を生んだ。それで兄に「私は伊豆志袁登賣を得た。」と言った。それでその兄は、弟が婚姻したことを激しくいきどおり嘆き、賭けた物を渡さなかった。そこで愁いて母に言った時、「現世の事、能く許曾神を見習いなさい。又、現世の人々を見習え、そんなものはいらない。」と言って、兄を恨んで、伊豆志河の河島の一節の竹を取って、八目の荒篭を作って、その河の石を取って、塩と合わせて竹の葉に包んで、呪って、「この竹の葉が青いように、竹の葉の萎えるように、青くなって萎えろ。又、この塩が乾くように、潮にまみれて乾け。又、この石が沈むように、沈んで伏せろ。」と言った。こう呪って、竈の上に置いた。これで兄は、八年間、やせ細る病で衰えた。それで、兄は患い泣いて、親に願うと、呪いの置物を戻した。それで身は安らかに平癒した。これが願懸けの言葉の基だ。<系図なので略>品陀天皇の年齢は壹佰參拾歳。甲午の年の九月九日に崩じた。陵は川内の惠賀の裳伏の岡に在る。】と訳した。

阿加流比賣神が祀られる碁曾社の碁曾は『舊事本紀』「彦己蘇根命爲凡河内國造即凡河内忌寸祖」と河内の王都、阿加流神は「素戔鳥尊將昇天時有一神號羽明玉此神奉迎而進以瑞八坂瓊之曲玉矣」と八坂瓊を創った神、伊豆志神は但馬の出石神社、由良都姫の夫が大矢口宿祢でその父が出石心大臣で、大臣、すなわち、大国の国神で、出石神社の宮で統治したと考えられる。

すなわち、この説話は大水口と大矢口が由良都姫を取り合った説話と、兄弟で由良の姫神を取り合った大国の古来の説話を纏めたと考えられ、多遅麻の姪の雌鳥姫が天皇の璽の足玉・手玉を持っていたのは、素戔鳥尊に渡した瑞八坂瓊之曲玉を君子国王の天日方奇日方が美良姫を妃にすることで手に入れて皇位に就き、『古事記』の神武天皇は大物主の娘を妃にするが、大物主の飯賀田須の妃も天皇の璽を持つ美良姫で、葛城氏は皇位を由良都姫から得て、今に至っていると主張していると思われる。

すなわち、穂積氏建諸隅が「甘美鏡」、物部氏十市根が「韴霊」()、和珥臣の多遅麻が「八坂瓊」()を手に入れて物部氏の三種の神器をもつ皇位を主張し、それを葛城氏が継承したと主張している。


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