2024年3月15日金曜日

最終兵器の目  新しい古代の神話 日本の神話構造

『日本書紀』は大倭根子を、『古事記』は大臣を、『舊事本紀』は大連を扱った歴史書である。『日本書紀』には天智天皇が天命開別天皇と記されている。しかし、『續日本紀』では天智天皇を近江大津宮御宇大倭根子天皇、淡海大津宮御宇倭根子天皇としている。ここでの「倭根子」は『続日本紀』の天皇の称号である。即位時の天皇は、「現御神大八嶋國所知倭根子天皇」と記述されており、このことからも明らかだ。『續日本紀』を記した桓武天皇は天智天皇の末裔であり、そのため天智天皇に「倭根子」の称号を与えたのだ。『日本書紀』を書いた藤原氏は、天智天皇の家系から皇位を奪ったため、倭根子の称号を与えなかったと思われる。

倭根子の称号は、日子賦斗迩、日子国玖琉、日子大毘毘、小碓の弟、白髮に限られている。これに代わって出雲色、出石心、瀛津世襲の大臣たちが登場した。葛木彦や尾張連の祖の羸津世襲、そして尾綱根などがその中に含まれる。尾綱根は意乎巳連(大臣連)の父であり、崇神朝では伊香色雄大臣から武諸隅大連と、以後、大臣の代わりを大連が務めた。白髮は、大伴室屋大連と平群真鳥大連の2人の大連の対立の結果と見られる。

『日本書紀』の安康紀までは、大伴氏と葛木氏を中心にした記述である。葛木氏の政権参画の祖は「葛木土神劔根」であり、その劔根の娘である賀奈良知姫と尾張氏の天忍男が婚姻し、羸津世襲が生まれた。「羸津世襲命亦云葛木彦命尾張連等祖」ということで、葛木王は尾張氏と意乎巳(大臣)連の祖でもある。『日本書紀』には大伴氏、葛木氏、尾張氏に関する神話が記されており、物部氏は補助的に扱われている。

雄略朝には倭根子の存在がなく、代わりに大伴氏が大連になった。大伴氏が最高権力者のため、『日本書紀』の最初には大伴氏に関する神話が掲載されていると考えられる。そして、『舊事本紀』は物部氏と大伴氏、そして葛木氏の系統を継ぐ蘇我大臣によって編纂され、最後は藤原氏の時代に完成されたため複数の神話が並列して記述された。『古事記』は葛木氏と巨勢氏によって記され、後に藤原氏によって編纂された。大臣の神話よりも藤原氏の神話が先に記されている。『日本書紀』の一書を見れば、複数の氏族による神話が存在したことが明らかである。異なる氏族が同じ神話を伝えたために、いくつかの差異が生じた。しかし、共通部分は、異なる氏族であっても、主要氏族との姻戚の関係があったため、神話も相互に影響し合っていた。日本の朝廷は皇太后を祀る政権だったのが、その理由である。

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