『日本書紀』慶長版は
「是月廬城部連枳莒喩女幡媛偸取物部大連尾輿瓔珞獻春日皇后事至發覺枳莒喩以女幡媛獻采女丁幷獻安藝國過戸廬城部屯倉以贖女罪物部大連尾輿恐事由己不得自安乃獻十市部伊勢國來狹狹登伊贄土師部筑紫國膽狹山部也武藏國造笠原直使主與同族小杵相爭國造經年難决也小杵性阻有逆心髙無順密就求援於上毛野君小熊而謀殺使主使主覺之走出詣京言狀朝庭臨斷以使主爲國造而誅小杵國造使主悚憙交懷不能默已謹爲國家奉置横渟橘花多氷倉樔四處屯倉是年也太歲甲寅」
【この月に、廬城部の連の枳莒喩の娘の幡媛が、物部の大連の尾輿の首飾りを盗み取って、春日の皇后に献上した。事実が発覚して、枳莒喩の、娘の幡媛を、後宮の女官に献上した。併せて安芸の国の過戸の廬城部の屯倉を献上して、娘の罪を贖った。物部の大連の尾輿は、事体は自分が原因ということで身に降りかかることを恐れて、安心できなかった。それで十市部、伊勢国の來狹狹・登伊の贄の土師部、筑紫国の膽狹山部を献上した。武蔵の国造の笠原の直の使主と同族の小杵とが、国造を互いに争って、何年たっても決めることが出来なかった。小杵は、性格が険しく逆らうことが有って志が高くて素直でない。密かに上毛野の君の小熊に助けを求めに行って、使主を殺そうと謀った。使主はそれをさとって逃げ出し、京にやって来て状況を述べた。朝庭は使主に対して、使主を国造にすると言い渡し、小杵を誅殺した。国造の使主は、押し殺して喜んだが、黙っていることが出来ず、謹んで国家の為に、横渟・橘花・多氷・倉樔、四所の屯倉を置いて奉納した。この年は、太歳が甲寅だった。】とある。
この頃の出土物に稲荷山古墳の『金錯銘鉄剣』が出土しているが、「辛亥年」から471年と531年の説があり、古代史の世界では「獲加多支鹵大王」を「ワカタケル」と読ませて雄略天皇と決めつけて471年作成としている。
しかし、獲は誰が見てもワなどと読めず、「カ」または「エ」としか読めず、「支」も「シ・サ」でせいぜい岐の略字でキと読ませる程度、「鹵」は「ロ・シ」で、とにかく読みなさいと言っているようなもので、「鹵」の字は「阿鹵旱岐」、「中佐平麻鹵」、「百濟遣將軍君尹貴麻那甲背麻鹵等」、「盖鹵王」と朝鮮語に対する音として使用しており、日本人の名に含まれることは少なそうである。
そして、前方後円墳の竪穴棺は先に溜池ありきの残土置き場を墳墓に流用したものと証明し、2回の春名山噴火が6世紀にあり、その下の層に古墳が有ったからと言ってその時、墳墓となっていたか不明だ。
土器編年も鉄剣銘の辛亥年を471年として,ここから須恵器TK23~TK47型式を5世紀後半~末葉に比定し、須恵器を古墳時代に符合させるために開始年代を早め、崇峻天皇元年588年の「始作法興寺此地名飛鳥眞神原」と飛鳥寺が建てられた588年の下の層からTK43式須恵器が発見されたので、この型式を定点としたが、この型式を造った窯の基礎となる水を引く樋管の木が613年以降に伐採された木を使用し、隋様式の硯も見つかっていて、証拠となるのか不明だ。
このように、須恵器の年代も証拠にならず、531年に死亡した「乎獲居臣」おそらく読みは「ヲカコオミ」であるが、「獲居」は「弖已加利獲居」、「多加披次獲居」、「多沙鬼獲居」と何代もの人物に付加されていて、『三国志』には「伊都國官曰爾支副曰泄謨觚柄渠觚」、「奴國百里官曰兕馬觚副曰卑奴母離」、「不彌國百里官曰多模副曰卑奴母離」と各国異なる官位を持っているように、武蔵国にも「獲居」という官位が有り得る。
そして、この家系は「祖名意富比垝其児多加利足尼其児名弖已加利獲居其児名多加披次獲居其児名多沙鬼獲居其児名半弖比其児名加差披余」と大彦を始祖として、8代目、当然紀元前から6世紀で8代のはずが無く、宮世代で夫々三代程度襲名が有り、2代目の多加利足尼は王家で、三代目から多加利足尼のおそらくNo1の臣下となって仕えたが、6代目から没落してしまったが8代目に乎獲居とまたN01の臣下となり「斯鬼宮」の「多加利」の宿禰、宿禰は天皇に準じる大王を意味し、天皇家の皇太子と同等の地位の大王の子孫の「獲加多支鹵」大王の補佐をしたと記述されているのである。
まさに、小杵は「乎(獲居)」の長男で上毛野君若しくは皇太子のNo1の臣下武蔵国造の父親が531年に亡くなり、先代の上毛野君の陵に追葬してもらい、銘文付きの刀を副葬してもらったが、巨勢氏を取るか物部氏を取るかの争いで、小杵は上毛野君と共に巨勢側について、同族の使主が物部氏について小杵は責任を取らされたと考えられる。
531年は磐井の乱と王朝の争奪戦で、『常陸國風土記』西野宣明の「自相模国足柄岳坂以東諸縣揔稱我姫國」の難波朝まで続いた関東我姫国の倭武天皇の後裔上毛野の王朝もどちらにつくかの選択を迫られた戦いになったようであり、安閑の時代はその戦後処理の時代となったのだろう。
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