2021年7月28日水曜日

最終兵器の目  『日本書紀』一書 第七段3

  『古事記』前川茂右衛門寛永版は「速須佐之男命白于天照大御神我心清明故我所生之子得手弱女因此言者自我勝云而於勝佐備離天照大御神之營田之阿埋其溝亦其於聞看大嘗之殿屎麻理散故雖然爲天照大御神者登賀米受而告如屎酔而吐散登許曽我那勢之命爲如此又離田之阿埋溝者地矣阿多良斯登許曽我那勢之命爲如此登詔雖直猶其悪態不止而轉天照大御神坐忌服屋而合織神御衣之時穿其服屋之頂逆剥天斑馬剥而所随(?堕)入時天衣織女見驚而於挨(?梭)衝陰上而死故於是天照大御神見畏開天石屋戸而判(?刺)許母理坐也尓高天原皆暗葦原中國悉闇」、【ここで速の須佐の男は、天照に「私は清廉潔白だ。だから、私が生んだ子はやさしい娘であった。これで、私が勝った。」と言って、勝ち誇って、天照の営む田の阿(?)を引き離して、その溝を埋め、またその大嘗を行う御殿に便を撒き散らした。それでも天照は咎めないで、「便などは、酔って吐き散らすのと同じだ。私の大事な貴方はどうしてこのようなことをした。また田の畔を切り離し、溝を埋めた土地も惜しくはない。私の大事な人、貴方は私にどうしてこのようなことをした。」と問いただしたが、なおその悪態が止まずにますます酷くなった。天照は祭礼の服を織る所に居て、神衣を織っていた時、その機屋の屋根に穴を開けて、天の斑馬を逆剥ぎに剥いで投げ入れた時に、天の機織の女が見て驚き、梭で陰部を衝いて死んだ。それで天照が見て畏れて、天の石屋戸を開いて入って籠った。そこで高天の原がすべて暗くなり、葦原中國は残らず暗闇になった。】と訳した。

『舊事本紀』前川茂右衛門寛永版は「伊奘諾伊弉冉二尊相生火神迦具突智與土神埴安姫二神・・・(後述)・・・養蝅之道乃起絍織之業者也」、「天照太神天垣田爲御田亦御田有三處号日天安田天平田天邑併田並皆良田之處雖經霖旱而無(?)損傷矣素戔鳥尊田有三處号日天樴田天川依田天口?()田並皆磽地而雨則流之旱則焦之素戔鳥尊之爲行也甚以無狀妬害姉田之時春則重播種子且?()其畔捶籤放樋廢渠埋溝也秋則放天斑駒使伏田中昌以絡繩捶籤伏馬也覆見天照太神嘗 大嘗亦新嘗時則於新宮御席之下放尿送糞日神不知徑坐席凡厥諸事一日無息盡是無狀雖然日神思親之意不慍不恨皆以悉容焉天照太神方織神衣居齊服殿則天斑駒生剝逆剝穿殿甍而投納之時天照太神驚動以捘傷身矣一説織女稚日姬尊乃驚而隨機以(?)怯損傷體而神退矣其稚日姬尊者天照太神之妹也天照太神謂素戔鳥尊日汝猶有黒心不欲與汝相見乃入于天窟閇磐戸而幽居焉故高天原皆闇亦葦原中國六合之内常闇不知晝夜之殊」、【天照は、天の垣田を御田とした。また、御田は三ヶ所あり、名づけて天の安田・天の平田・天の邑并田という。これらはみな良田だった。長雨や旱魃にあっても、損なわれることがなかった。素戔烏にも三ヶ所の田があった。名づけて天の樴田・天の川依田・天の口鋭田だ。これらはみなやせ地だった。雨が降れば流れ、日照りになると旱魃になった。素戔烏は成果が出ないため、、妬んで姉の田を害した。春には種を重ねて蒔き、畔を壊し、竹串をさし、筧を置いたり、用水路を崩したり、溝を埋めたりした。秋には天の斑馬を放って、田の中を荒した。縄を結んで、竹串をさして、馬で荒した。また、天照が神嘗・大嘗・新嘗を見て、新宮の席の下に放尿脱糞した。日の神は知らずに席に着いた。こんなことは、一日も止むことはなく、確かに無作法だったが、日の神は、親心を持ってとがめず恨まず、すべて赦した。天照が神衣を織るために機屋へ行った。そこへ素戔烏は、天の斑馬を生きたまま皮を剥いで、機屋の屋根に穴をあけて投げ入れた。このとき天照はとても驚いて、機織の梭で体を傷つけた。一説には、織女の稚日姫が驚いて機から落ち、持っていた梭で身体を傷つけ亡くなったという。その稚日姫は、天照の妹だ。天照は素戔烏に「お前はやはり邪心がある。もうお前と会いたくない」と言って、天の岩屋に入り、磐戸を閉じ隠れた。そのため、高天の原は暗くなり、また葦原の中の国も六合も真っ暗になって、昼夜の区別が無くなった。】と訳した。

『舊事本紀』の前半は、類似の説話が後で『古事記』に対応した内容で記述されるので、後に回した。

この説話の3史書の異なる点が有り、『日本書紀』は全て大神の事件で、天照が傷つけられたので怒って岩屋に閉じこもったので、六合が暗くなり、大神の会話は葦原中國にかわったのに対し、『古事記』は同じく全て大神で、大神は我慢していたが、天の機織女が殺され閉じこもったので、高天の原が暗くなり、付け加えて葦原中國も暗くなった。

それに対し、『舊事本紀』は大神が途中から日神に書き換わり、日神は我慢したが、大神が傷ついたので怒って閉じこもり、高天の原が暗くなり、付け加えて、葦原中国も六合も暗くなったと記述している。

すなわち、高天の原も葦原中国も六合も全て異なる王の支配地域で、『日本書紀』は六合、すなわち、黄海・玄界灘・日本海南西部を支配する『山海經』の大人国の氏族の神話で、『古事記』は高天原を支配する氏族の神話に「なか国」を支配する『山海經』の君子国の神話を付け加え、『舊事本紀』は高天原を支配する氏族の神話に六合を支配する氏族の神話と「なか国」を支配する『山海經』の丈夫国・豊日の氏族の神話を付け加えたことを意味する。

そして、本来の元となった神話は、高天原を支配する日神の地域に素戔嗚が来て農法を改良して国を取られそうになったが、我慢していた日神の氏族の機織女の稚日姫が傷ついたので、日神が閉じこもった説話と考えられる。

大神が支配する氏族が、この神話の日神や稚日姫を大神に置き換えたのが『日本書紀』で、大国が三身国(日国)の綱で建国したように、日国王の日神の神話を大国がつかい、そして、『古事記』は日向国と「なか国(豊国の分国)」の神話を付け加え、『舊事本紀』は『古事記』に『日本書紀』の神話を加え、神話の時系列と史書の時系列が一致する。

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