2021年7月12日月曜日

最終兵器の目  『日本書紀』一書 第六段4

 『舊事本紀』前川茂右衛門寛永版は「素戔鳥尊請日吾令奉敎將就根國故欲暫向於髙天原與姉相見而後(?)退矣勑許之乃昇(?)於天也伊奘諾尊功既至矣徳亦大矣神(?)既畢當(?)登矣天報命留宅於日之少宮覆孁運當遷是以搆幽宮於淡路之洲寂然長隱亦坐淡路之多賀者矣<重複▽-素戔鳥尊請日吾令奉敎將就根國故欲暫向髙天原與姉相見而後(?)退矣伊奘諾尊勑許之乃昇(?)之於天也-△>素戔鳥尊將昇天時有一神號羽明玉此神奉迎而進以瑞八坂瓊之曲玉矣素戔鳥尊持其瓊玉而昇天之時溟渤以之鼓盪山岳為之鳴呴此則神性健雄使之然也矣於天上詣之時天鈿賣命見而告言於日神矣天照太神素知其神暴惡至聞來詣之狀乃勃然驚動曰吾弟(?)以來者豈以善意當有奪我高天原之心欤夫父母既任諸子各有其境如何棄置當就之國敢窺窬此處乎乃解御髮纏御髻結御髮為御鬘縛御裳為御袴而即於左右鬘亦於左右御手及腕各纏八咫瓊之五百箇御統之瓊玉覆背負千箭之靭並五百箭之靭覆臂著稜威之高柄振起弓彇急握劔柄踏堅庭而陷股若沫雪蹋散而舊稜威之雄詰發稜威之(?嘖 口+賣)讓而徑詰問何故上來焉素戔鳥尊對曰吾元無黑心但父巳有嚴勑永將就于根國如不與姉相見吾何能敢去亦欲獻珎寶八坂瓊之曲玉耳不敢別有意也是以跋渉雲霧遠自來叅不意阿姊翻起嚴顏于時天照太神覆問日若然者何以將明尓之赤心汝言虛實何以為驗素戔鳥尊對曰請與姉共誓約之中必當生子如吾(?)生是女者可以為有濁心若是男者可以為有清心」、【素戔烏が「私は、命令に従って、根の国に行きます。そこで高天原に行って、姉に会ってから別れしようと思います」と願い出て、伊奘諾尊が「許す」と言ったので、天に上った。伊奘諾は、仕事を終え、偉大で徳が有るとの名声を得て将軍を引退し、天に帰って報告し、日の少宮に留まり住んだ。そして、また、孁に行こうとした。そこで、隠居の宮を淡路の地に造って、静かに永く隠居した。また淡路の多賀にいるともいう。素戔烏が「私は今、命令にしたがって、根の国に行きます。そこで高天原に行って、姉に会ってお別れしたいと思います」と願い出た。伊奘諾は「許す」と言ったので天へ海流を昇った。その時、一柱の神がいた。名を羽明玉という。この神が迎えて、瑞の八坂瓊の勾玉を献上した。素戔烏がその玉を持って天に昇る時、大海はとどろき渡り、山岳も鳴りひびいた。これはその性格が猛々しいからだ。天に昇る時に、天鈿売がこれを見て、日の神に報告した。天照太神は、もとからその神の荒くよからぬことを知っていて、やってくる様子を見て、とても驚いて「私の弟がやってくるのは、きっと善意ではない。きっと高天原を奪おうとしているのだろう。父母はすでに子供たちに命じて、境を設けた。どうして自分の行くべき国を棄てて、こんなところに来るのか」と言い、髪を解いて髻にまとめ、髪を結いあげて鬘とし、裳の裾をからげて袴とし、左右の鬘、左右の手および腕にもそれぞれ玉五百を緒に貫いた2mの統を巻きつけた。また、背には大型の靱と半靱を負い、腕には立派な高鞆をつけ、弓弭を振り立て、剣の柄を握り、堅い地面を股まで嵌まり込むほど踏み、土を沫雪のように散らし、勇猛な振る舞いと厳しい言葉で「どういうわけで上って来た」と詰問した。素戔烏は「私にははじめから邪心はない。ただ父の厳命があって、長く根の国に就くのに、姉に会わないで、私はどうしておいとまできますか。また、珍しい宝の八坂瓊の勾玉を献上したいと思うだけだ。他に考えていません。そのため雲霧を踏み越えて、遠くからやって来たのです。思いがけなく姉の厳しい顔を見ようとは」と答えた。すると天照太神がまた「そうなら、何でお前の潔白を証明するのか。お前のいうことが嘘か本当か、どのように証拠とするのか」と尋ねた。素戔烏が「どうか私と姉とで、ともに誓約して子を生みましょう。もし私の生んだ子が女だったら、邪心があると思いなさい。もし男だったら、潔白です」と答えた。】と訳した。

『古事記』前川茂右衛門寛永版は「故各随依賜之命所知看之中速須佐之男命不治所命之國而八拳須至于心前啼伊佐知伎也其泣状者青山如枯山泣枯河海者悉泣乾是以悪神之音如狭蝿皆満満物之妖悉發故伊耶那岐大御神詔速須佐之男命何由以汝不治所事依之國而哭伊佐知流尓荅白僕者欲罷妣國根之堅洲國故哭尓伊耶那岐大御神大忿怒詔然者汝不可住此國乃神夜良比尓夜良比賜也故其伊耶那岐大神者坐淡海之多賀也故於是速須佐之男命言然者請天照大御神將罷乃参上天時山川悉動國土皆震尓天照大御神聞驚而詔我那勢命之上來由者必不善心欲奪我國耳即解御髪纏御美豆羅而乃於左右御美豆羅亦於御縵亦於左右御手各纏持八尺勾璁之五百津之美須麻流之珠而曽毗良迩者負千入之靭比良迩者附五百入之靭亦所取佩伊都之竹鞆而弓腹振立而堅庭者於向股蹈那豆美如沫雪蹶散而伊都之男建蹈建而待問何故上來迩速須佐之男命荅白僕者無邪心唯大御神之命以問賜僕之哭伊佐知流之事故白都良久僕欲往妣國以哭尓大御神詔汝者不可在此國而神夜良比夜良比賜故以爲請將罷往之状参上耳無異心尓天照大御神詔然者汝心之清明何以知於是速須佐之男命荅白各宇氣比而生子」、と凡そ同じだ。

根の国が、『古事記』では出雲、『舊事本紀』では紀伊熊野と其々の王朝によって異なったように、伊弉諾の出身地も天照大神を生んで、大神なのだから大国と考えられ、『舊事本紀』が「孁」に帰ろうとしたと記述するが、「孁」は「大日孁」の「孁」で、蛭子が対であるように、子に対する「孁」で女神を表し、母のもとの日国に帰ろうとしたことを示す。

伊弉諾の出身地が『日本書紀』は淡路島で、そこを追い出されて安芸で建国して、淡路島に葬られ、『古事記』は淡島が出身地で、淡島を追い出されて淡路島で建国して、志賀淡海の多賀に葬られ、『舊事本紀』では淡路が出身地で、淡路島へ移動して伊予で建国して淡路島で葬られている。

日の少宮は恐らく淡路島近辺に有ると考えられ、少はこ・小・子の表意文字の一つで、日の兒宮と考えられ、「吉備兒嶋謂建日方別」と吉備の小国は建日の分国で、まさに日国の小宮を意味すると考えられる。

史書がどの文字を使うかは史書を書いた時代の感覚で「あわ」が粟か淡かそれとも別か解らないが、史書を書いた時期では巨勢氏のおそらく、母系の出身地が近江で「あわ」と呼ばれたようで、物部氏のおそらく母系の出身地が淡路島で、平郡氏も淡路島と考えられる。

『山海經』の九州から朝鮮半島東部を記述する「海外西經」に日本海と黄海に面した壱岐を思わせる女丑、その北に二女王が支配する女子国が記述され、まさに、天照と月弓で、共に天国に戻され、当然、古代は王が武器を持って戦い、天照が武器を持った様子を生き生きと示している。

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