2021年5月19日水曜日

最終兵器の目  『日本書紀』一書 第四段2

 次に一書()一書曰伊弉諾尊伊弉冉尊二神立于天霧之中曰吾欲得國乃以天瓊矛指垂而探之 得磤馭慮嶋則拔矛而喜之曰善乎國之在矣」、【一書に、伊奘諾と伊奘冉の二神は、天の霧の中に立って、「私は、國をえる」と言った、乃ち天の瓊矛を、指し垂して探ったら、磤馭慮の嶋を得た。それで矛を拔いて、「なんと善い國が在った」と喜んだ。】と訳した。

次に一書()一書曰伊弉諾伊弉冉二神坐于髙天原曰當有國耶乃以天瓊矛畫成磤馭慮嶋」、

【一書に、伊奘諾伊奘冉の二神が、高天の原に居て、「本当に國が有るのか」といって、それで天の瓊矛で、磤馭慮嶋を描いた。】と訳した。

この2つの一書は国生みの場所が異なり、本文と一書()は天の浮橋と天国の船から延ばした桟橋で磤馭慮嶋を生んでいるが、一書()は天国の霧という地域、一書()は髙国の天原という土地がありそこで磤馭慮嶋を生んでいて、この霧や天原は対馬の人物が隠岐を得た神話と考えられる。

次に一書()一書曰伊弉諾伊弉冉二神相謂曰有物若浮膏其中蓋有國乎乃以天瓊矛探成一嶋

 名曰磤馭慮嶋」、【一書に、伊奘諾伊奘冉の二神が、「物が有って浮ぶ膏のようだ。その中にもしかしたら國が有るかもしれない」と語り合った。それで天の瓊矛で、探って私たちの嶋となった。名づけて磤馭慮嶋という。】と訳した。

この一書(2~4)は「葦牙彦舅」の国の神話の影響を受けていない神話と思われ、一書()が一番古く、伊弉神が浮ぶ膏と比喩し、日本では膏はおそらく鯨油でクジラを磤馭慮嶋にたとえて得ている

次に一書()一書曰陰神先唱曰美哉善少男時以陰神先言故爲不祥更復改巡則陽神先唱曰美

哉善少女遂将合交而不知其術時有鶺鴒飛来搖其首尾二神見而學之即得交道」、【一書に、陰の神まず「美しい、善く若い男よ」と唱えた。その時に、陰の神の言葉が先だったので、不吉として、更にまた、改めて回った。それで陽の神がまず、「美しい、善く若い女よ」と唱えた。遂に接合しようとしたがその方法を知らなかった。その時に鶺鴒がいて、飛び来たってその首と尾を搖らした。二神が見て学び、それで方法を得た。】と訳した。

この一書は『山海經』の丈夫國の北の「有陰有陽」の「奇肱之國」の神に名が無い初段階の神話で、女性も先頭に立って土地を開墾していたが、男性が他領地を獲得をするようになった神話なのではないだろうか。

次に、一書()一書曰二神合爲夫婦先以淡路洲淡洲爲胞生大日本豊秋津洲次伊豫洲次筑紫洲次雙生億岐洲與佐度洲次越洲次大洲次子洲」、【一書に、二神夫婦が合して、先ず淡路の洲淡の洲を胞として、大の日本の豐の秋の津の洲を生む。次に伊豫の洲。次に筑紫の洲。次に億岐の洲と佐度の洲とを雙に生む。次に越の洲次に大の洲次に子の洲】と訳した。

一書()の神話は本文と同じように阿波や淡路島から逃れた豊秋津洲出身の王の流れを汲む王が筑紫の王とともに、伊予・隠岐や君子国の越を破り大人国の丹波や吉備を配下にした大倭国王となったと主張している。

ある王が国の成り立ちを述べる時、協力者になった順を重要視するのは当然の帰結である。

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