2019年10月14日月曜日

最終兵器の目 仲哀天皇4

  『日本書紀』慶長版は
己亥到儺縣因以居橿日宮秋九月乙亥朔己卯詔群臣以議討熊襲時有神託皇后而誨曰天皇何憂熊襲之不服是膂之空國也豈足舉兵伐乎愈茲國而有寶國譬如美女之睩有向津國眼炎之金銀彩色多在其國是謂𣑥衾新羅國焉若能祭吾者則曾不血刃其國必自服矣復熊襲爲服其祭之以天皇之御舩及穴門直踐立所獻之水田名大田是等物爲幣也天皇聞神言有疑之情便登髙岳遙望之大海曠遠而不見國於是天皇對神曰朕周望之有海無國豈於大虛有國乎誰神徒誘朕復我皇祖諸天皇等盡祭神祇豈有遺神耶時神亦託皇后曰如天津水影押伏而我所見國何謂無國以誹謗我言其汝王之如此言而遂不信者汝不得其國唯今皇后始之有胎其子有獲焉然天皇猶不信以強擊熊襲不得勝而還之九年春二月癸卯朔丁未天皇忽有痛身而明日崩於是皇后及大臣武內宿祢匿天皇之喪不令知天下則皇后詔大臣及中臣烏賊津連大三輪大友主君物部膽咋連大伴武以連曰今天下未知天皇之崩若百姓知之有懈怠乎則命四大夫領百寮令守宮中竊收天皇之屍付武內宿祢以從海路遷穴門而殯于豊浦宮爲无火殯斂甲子大臣武內宿祢自穴門
還之復奏於皇后是年由新羅役以不得葬天皇也
【己亥の日に、儺縣に着いて、橿日宮にいた。秋九月の朔が乙亥の己卯の日に、役人に詔勅して、熊襲を討とうと話し合った。その時に、神が、皇后にお告げで「天皇よ、どうして熊襲が服従しないことを憂えるのだ。これは、背中の肉のように何もない国だ。挙兵して討つに足る国なのか。この国よりたくさん宝物が有る国、たとえば美女がじっと見るように、対岸の港がある国だ。目が金銀で燃えるように彩るように多くある国だ。これを栲衾の白の新羅の国という。もししっかりと私を祭れば、血を流さないで、其の国はきっと自分から服従するだろう。また、熊襲も服従する。その祭る方法は、天皇の船と穴門の直が受け継いで献上する水田、名なづけて大田というが、これらの物を神前に供えなさい」とさとした。天皇は、神の言葉を聞いて、疑心を持った。それで高い岳に登って、遥か大海を望んだが、広くて遠く国が見えなかった。それで、天皇は、神に「私が見回したけれど、海だけで国は無かった。どうして何もないところに国が有るのか。どの神がいたずらに私をあざむくのか。また、私の皇祖や諸天皇たちが、全て残らず神祇を祭った。どこに、残った神が有るのか」と答えた。その時、神がまた皇后に取りついて「天の津の水影のように、ねじ伏せて見せた国をどうして国が無いと言って、私のことを誹謗するのか。それはお前がそのように言って信じなければ、お前は、その国を得ることが出来ない。ただし、今、皇后が始めて妊娠した。その子が獲るだろう」と言った。しかし、天皇は、それでも信じず、強引に熊襲を撃った。勝つことが出来ずに戻った。九年の春二月の朔が癸卯の丁未の日に、天皇は、体を傷めて、明日に、崩じた。皇后と大臣の武内の宿禰が、天皇の死を隠して、天下に知らしめなかった。それで皇后は、大臣と中臣の烏賊津の連・大三輪の大友の主君・物部の膽咋の連・大伴の武以の連に「今、天下はまだ天皇が崩じたことを知らない。もし百姓が知ったら、なまけるだろう」と詔勅した。すなわち四人の高官に命じて、役人に命令して、宮中を守らせた。ひそかに天皇の屍を棺に收めて、武内の宿禰に任せて、海路で穴門に遷した。それで豊浦宮にかりにもがりして、火葬しないで死者のなきがらをおさめた。甲子の日に、大臣の武内の宿禰が、穴門から還って、皇后に復命した。この年、新羅の役によって、天皇を葬むることが出来なかった。】とあり、標準陰暦と合致する。
この説話は2つの豊浦宮にいる王と香椎宮を首都にする王の説話で、夏磯姫のたちの説話としては当然新羅を知らないはずが無く、この当時の倭奴国は新羅を別の名で呼んでいて、那の津の対岸は『三国志』でも「狗邪韓國」、新羅は「辰韓」と呼んでいて、新羅の対岸にある国は出雲より東の国である。
ところが、この出雲から東の国は新羅の宗主国で討伐する必要がなく、日槍のように人質として朝廷に赴いていて、逆に守るべき国なので、この新羅を討とうとする王は『後漢書』の「女王國東度海千餘里至拘奴國」や倭奴国で、しかし、拘奴国は新羅を守ろうとする大国によって攻撃されることになり、『三国史記』で攻撃してくる国は倭国である。
すなわち、香椎宮が倭奴国の首都で拘奴国の首都が豊浦宮の『後漢書』の世界、神功皇后たちは周防からの攻撃で、拘奴国の中の王の熊鰐が拘奴国を裏切って豊浦に案内した後の話で、『三国志』の世界で、香椎宮に伝仲哀天皇陵があるが、『日本書紀』が豊浦に遺体を持ち帰っていて、仲哀天皇陵では有り得ない。
そして、北を見ても新羅が無いと言った王は「周芳娑麼」から出撃して京都郡に都を持ち、拘奴国すなわち熊襲の一部を押しやって紀伊まですなわち瀬戸内を制覇した王が穴門に宮を置いて新羅をはじめて攻撃しようとしていた4世紀中の説話である。

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