神話と歴史のあいだは曖昧である。しかし、そこに一筋の光を差し込む方法がある。それは、誰にも改ざんできない、自然の記録、天体が刻んだ、動かしようのない証拠である。
とくに、日蝕。太陽・月・地球が、まっすぐに並ぶ新月のほんのひととき、世界が影に包まれる空の出来事である。この天文現象は、正確に「その日」を記録してくれる。従って、古代の史書に日蝕の記録が残されていれば、それを、現代の天文学で照らし合わせることができる。そして、幸運にも極東は陰暦、月の記憶を文字に残した。物語の中に差す、現実の一条の光。歴史と科学の共同作業が、そこから始まる。
そこで私は、中国や朝鮮の古代史書、『漢書』『三国志』『後漢書』『晋・宋・梁・周・陳・隋書』『新・舊唐書』に書かれた日蝕の記録を、一つひとつ洗い出してみた。その数、なんと327件。日付のズレを避けるため、ユリウス通日(絶対日数)という天文の暦換算法を用いて、
干支の循環(60日周期の暦符号・ユリウス数を60で割った余り)、
朔日との対応(月の位置を計算)、
十二中気(太陽の位置を計算)、
中気の無い閏月の組み込みまで、一つの記録も見逃さないよう、徹底的に検証した。この暦は、論理的な陰暦。実際の陰暦は中気にズレがある。【※ユリウス数0はロンドン時間で紀元前4713年1月1日 正午(ユリウス暦換算)、現代の暦を遡ると西暦紀元前4712年1月1日 正午が起点。24時間で1加わる。】
すると、313件がピタリと一致した。正答率は95・7%。これは偶然ではない。統計的にも「有意差あり」と判断される、揺るぎない信頼性である。つまり、中国の古代史書に記された日蝕の多くが、実際に空で起きた出来事だった。
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